筆記試験から3週間ほどが過ぎ、お盆休みが見えてきました。答案の手応えを確かめるように再現論文を書いた方も、いったん頭を休めている方もいらっしゃるでしょう。
そこで、こう思われるかもしれません。「まだ合格発表も出ていないのに、口頭試験の準備を始めるのは気が早いのではないか」と。
令和8年度の筆記試験合格発表は11月4日です。たしかにまだ先です。ただ、口頭試験が行われるのは12月から翌年1月にかけて。発表を見てから動き出すと、準備に使える時間は1か月ほどしか残りません。
この記事では、お盆休みという期間の性質を踏まえて、この時期にやる価値が高い作業と、まだやらなくていい作業を切り分けてお伝えします。
発表を待つと、準備期間は1か月しかない
まず、これから先のスケジュールを具体的に置いてみます。
11月4日に筆記試験の合格発表があり、そこから口頭試験の日程が個別に通知されます。試験地は東京都のみですから、地方在住の方は移動と宿泊の段取りも必要です。そして12月は、多くの技術者にとって年度後半の山場と重なる時期でもあります。
つまり発表後の1か月は、日常業務を抱えたまま、準備と移動の手配を同時に進める期間になります。ここで初めて自分の業務を振り返り始めるのは、かなり分の悪い戦い方です。
では発表前のいつ動くか。ここでお盆休みが効いてきます。
年内に残るまとまった休みを数えると、お盆の次は年末年始です。ところが年末年始は、口頭試験の期間そのものと重なります。落ち着いて材料を整える時間として使えるのは、実質的に今のお盆が最後になります。
お盆は「資料が要らない作業」に充てる
とはいえ、お盆にできることには制約があります。
会社が止まるからです。設計図面も、当時の報告書も、議事録も手元にありません。「あのときの試験圧力は何MPaだったか」を確かめようにも、サーバーにつなげません。当時の担当者や上司に確認することもできません。
ここを見落とすと、休みの初日に資料を探そうとして止まり、そのまま数日が溶けます。
お盆にやるべきなのは、資料も人も必要としない作業です。 つまり、あなたの記憶と経験だけで完結するものに絞る。逆にいえば、そこに絞れば、この期間の生産性は驚くほど高くなります。
もう一つ利点があります。口頭試験の準備は、細切れの時間では進みにくい作業です。10分だけ記憶をたどっても、当時の状況は立ち上がってきません。まとまった連続時間があって初めて掘り起こせるものがある。お盆はその条件を満たす、数少ない期間です。
この時期にやるのは「答えを作ること」ではありません。答えの材料になる事実を掘り起こすことです。
お盆にやっておきたい3つの作業
順番に取り組める形で3つに絞りました。用意するのは、受験申込書のコピーと、白紙のノートだけです。
① 願書に書いた業務を「事実の年表」に戻す
4月に提出した業務経歴票の「業務内容の詳細」は、720文字という枠に収めるために極限まで圧縮されています。口頭試験では、その圧縮する前にあったはずの中身を聞かれます。
そこで、あの業務をもう一度、時系列の事実として書き出します。
いつ始まり、いつ終わったのか。誰と組んでいたのか。当初の要求仕様はどうで、どこが実現できなかったのか。設計を変更した判断はいつ、何を根拠に下したのか。
ここで出てくるもののうち、口頭試験で本当に効くのは採用しなかった案と、揉めた場面です。「なぜその方式を選んだのか」という問いに厚みを持たせるのは、選ばなかった選択肢を語れるかどうかにかかっています。願書と口頭試験のつながりについては願書は「口頭試験の台本」であるでも解説しています。
② 技術者でない家族に、3分で説明してみる
帰省先や自宅に、専門外の聞き手がいる。これはお盆ならではの条件です。
自分が担当した業務を、専門用語を使わずに3分で説明してみてください。配偶者でも、親でも、進学前のお子さんでも構いません。
技術士に求められる資質能力にはコミュニケーションが含まれています。そして口頭試験の試験官が、あなたの扱ってきた装置やプロセスに精通しているとは限りません。専門外の相手に伝わらない説明は、試験の場でも伝わりません。
この練習の価値は、うまく話せることではなく、どこで詰まるかが分かることにあります。言い換えられない用語が出てきたら、そこは自分の理解が用語に寄りかかっている箇所です。相手が退屈そうにしたら、そこは前提の説明が長すぎる箇所です。
③ 休み明けに会社で確認することをリスト化する
①と②を進めると、必ず「ここが思い出せない」という空白が出ます。数値、図面番号、報告書の所在、当時の関係者。
その空白を、埋めようとせずに書き出してください。 休み中は確認できないのですから、確認できないことを確定させるのがこの期間の仕事です。
このリストがあると、休み明けの1週間の動き方が変わります。出社してすぐ、サーバーを探す・上司に声をかける・当時の資料を借りる、という段取りに入れます。9月以降の準備の進み方が、ここで大きく変わってきます。
PMEでは、口頭試験に向けた個別のご相談をその他受験指導で承っています。書き出した年表を前に「どこを深掘りすべきか」を一緒に整理することもできます。他社の講座を受講中の方のセカンドオピニオンとしてのご利用も歓迎しています。
この時期にやらなくていい3つのこと
やることと同じくらい、やらないことを決めておくのが大切です。
想定質問と回答の作り込みは、まだ早い段階です。 材料が揃っていない状態で答えを固めると、9月以降に事実を確認した後で作り直すことになります。順序としては、材料を集めてから質問を組み立てる方が効率的です。想定質問づくりそのものの手順は休暇中にやっておきたい想定質問作りで詳しく解説していますので、①〜③を終えた方はそちらへ進んでください。
再現論文を「正解」に書き直すのもおすすめしません。 調べ直して本番より良い答案を作りたくなりますが、それでは本番のあなたの判断が上書きされてしまいます。修正版を作るなら、原本は別ファイルで必ず残してください。
そしてお盆で全部を終わらせようとしないこと。口頭試験まではまだ4か月以上あります。ここで走りすぎて息切れするのが、この時期にいちばん起きやすい失敗です。回答の丸暗記が本番で機能しない理由は“回答丸暗記”は不合格の元でも触れています。
まとめ
お盆休みに取り組む価値が高い作業を整理します。
- 願書の業務を事実の年表に戻す——720文字に圧縮する前の中身が問われる
- 専門外の相手に3分で説明する——詰まった箇所が、そのまま改善点になる
- 休み明けに確認することを書き出す——空白を埋めず、確定させる
いずれも資料も人も必要としません。必要なのは、まとまった時間と、あなた自身の記憶だけです。
まずは受験申込書のコピーを手元に置いて、白紙のノートに最初の1行を書くところから始めてみてください。
一人で振り返ることの限界
自分の業務を自分で振り返ると、当たり前になっている判断ほど素通りしてしまいます。長く携わった仕事ほど、その傾向は強くなります。第三者に問われて初めて「そういえば、あのとき別の案もあった」と思い出せることは少なくありません。
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